1・14時~15時30分
鈴木 昌二 様 株式会社アクテック 代表取締役
『 フルボ酸の活用方法 』
昨年末に、海洋関係を取り上げました。 外洋に比べて光合成生物が豊富に生育する沿岸部では外洋以上に鉄が必要とされる。 では沿岸海域の光合成物に影響を与える鉄の供給源は何であろうか。 そのフルボ酸の活用についてです!
- Wikipediaフルボ酸(フルボ酸、フルビック酸、fulvic acid)とは、植物などが微生物により分解される最終生成物である腐植物質のうち、酸によって沈殿しない無定形高分子有機酸。
1.フルボ酸とは
・植物の枯死体が微生物の働きにより分解されてできる、腐植質に含まれる有機酸の1つ。
・フルボ酸は、自然界では微量にしか生産されない貴重な資源で、通常は腐植土壌に多く存在します。
(腐植土壌とは、森林生態系において地上部の動植物により生産された有機物が堆積し、微生物により分解されて土状になったもの)
・1㎝形成するのに100年の時間を要します。
腐植土は厳密には土ではありません。
・フルボ酸はアルカリに可溶します。
2.フルボ酸の効果
・植物に対しては、ミネラルを補給する役目を担っています。
・動物にたいしては、ミネラルなどの微量養分を運び体内で循環する効果(イオン交換)があります。
⇒ 動物では消化器官(菌が存在する器官)にフルボ酸の効能がある
3.フルボ酸の抽出方法と
フルボ酸の量の測定方法
・腐植土をアルカリまたは弱塩のアルカリ塩に溶解。
酸によりフミン酸が下部に、上部にフルボ酸が分離し抽出します。
・活性汚泥法の浄化槽下でのフルボ酸の量を、測定するには、硫化イオンの量が低下することで槽内のフルボ酸量を測定します。
4.腐植土内における菌の特性
・通性嫌気性菌
酸素が存在する状況下では好気的呼吸によりエネルギーを獲得ができるが、酸素がない場合でも発酵によりエネルギーが得られるよう代謝を切り替えることができる菌
・腐植土は約8000年前の土壌を利用するため古細菌のため偏性嫌気性ないし偏性好気性が多いが嫌気呼吸に切り替えることができる。
5.腐植土内の通性嫌気性菌の一種
・腐植土には多数の常在菌が存在するがその 一種として硝酸菌が含まれておりこの菌によ
りアンモニアをNH3+H2Oをイオン交換することでNH2OH(ヒドロキシルアミン)に変化させることで臭気を抑えます。
6.腐植土の利活用
・活性汚泥法にて腐植土を何故利用するかは通性嫌気性菌を利活用を目的としています。
●活性汚泥を腐植土なしに曝気停止し一定期間放置すると活性汚泥は腐ってしまう
●腐植土を利用し活性汚泥を曝気停止し一定期間放置しても活性汚泥は腐らない。
⇒ 活性汚泥にはフルボ酸は無含有
7.フルボ酸を活用した循環システム
■フルボ酸を活用したシステム
活性汚泥消滅を活用した浄化槽が一般的
●汚泥消滅:腐植土のペレットを散気管に投入し、好気性菌を活性化させることで汚泥を消滅させる
システム *資料1・2
●生物脱臭:硫化水素が含まれたアンモニアの除去は 清水に比べると劣るが、フルボ酸を活用することで 70~80%の除去が可能となります。
8.生物脱臭
概要
汚水処理施設 、ゴミ処理施設、及び堆肥化処理施設で発生する悪臭成分はアンモニア、硫化水素、有機酸と一部の硫黄化合物です。
スクラバー式「生物脱臭装置」は汚泥( 好気性微生物、通性嫌気性微生物)に 腐植物質を添加し汚泥培養器により汚泥の無臭化、活性化、腐敗菌の抑制を行い悪臭
成分を分解、脱臭するものです 。
従来は、下記の方法で脱臭を行っています。
1)水・薬液による洗浄、吸収、酸化
2)薬剤によるマスキング
3)活性炭、特殊樹脂による吸着
4)直火 又は触媒燃焼
これらの内、主流は薬液による 薬液洗浄+活性炭吸着 ですが、設備費及び維持管理費がかかり過ぎる難点があります。
「生物脱臭装置」は、生物汚泥(微生物)により酸化分解し脱臭するため、薬剤などは不要です。そのため維持管理費が大幅に節減でき、薬剤による二次汚染がありません。
また、維持管理が容易と言う利点を持っています。
「生物脱臭装置」の特徴
1)自然の原理を応用した処理方法です。
2)薬剤などを使用しないため、二次公害がありません。
3)除去率が安定しています。
4)維持管理が簡単で費用も安価です。
最後に
9.生ゴミ堆肥化設備での実例 と活性汚泥消滅活用法の紹介 がありました。
2・15時40分~17時
守富 寛 様 岐阜大学
大学院工学研究科 環境エネルギーシステム専攻 シニア教授
(炭素繊維リサイクル研究センター長)
『 炭素繊維強化複合材料のリサイクル技術 』
自動車・航空機への利用拡大が期待される炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からの炭素繊維回収技術としては,熱分解,溶解法,流体法等があげられ,その形態としては,粉末状のミルド系,短繊維のチョップド系,長繊維があります。ここでは回収炭素繊維およびリサイクルCFRPの特性について紹介する。
1.はじめに
輸送エネルギーの大幅な削減のため,自動車・航空機への利用拡大が期待されている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は,埋立処分されているのが現状であり,資源循環型社会の形成の観点から,メーカもユーザも炭素繊維のリサイクルを求めている
CFは炭素燃料として燃焼するには揮発分は少なく燃えにくく,軽いため微粉砕すると未燃のまま飛散し集塵機のトラブル要因となることからも,マテリアルリサイクルが適切である.
また,現状ではCFRP製品,例えば航空機製造段階からのCF屑,プリプレグ,プリフォーム屑,成形屑が排出されているが,将来は寿命を終えたCFRP廃材もマテリアルリサイクルのフローに入ってくると予想される.
リサイクル技術の事業化には,廃材確保(川上),繊維回収(川中),リサイクルCF需要(川下)がバランスすること,バージンの連続繊維と異なり切断繊維での利活用を図ること,繊維劣化によるリサイクル回数を配慮すること,および川上から川下までの利用でバージンに優る低コスト・省エネ性を実現しなくてはならない.
※ CFRPとは,石油や石炭から作られる炭素繊維と樹脂を混ぜ合わせた複合材料のこと。
【炭素繊維「CF」】
炭素繊維(Carbon Fiber、以下「CF」)の特長は、何といっても軽くて強いことである。比重が1.8前後と、鉄の7.8に比べて約4分の1、アルミの2.7、あるいはガラス繊維の2.5と比べても軽い材料である。その上に強度、弾性率に優れ、引張強度を比重で割った比強度が鉄の約10倍、引張弾性率を比重で割った比弾性率が鉄の約7倍と優れている。これが、CFが従来の金属材料を置き換える軽量化材料として本命視されている理由だ。
CFRPのリサイクル技術
CFRPは、CF(炭素繊維)と樹脂(熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂)から構成され、樹脂をCFRPから除去してCFを回収する。
その方法として、熱分解、溶剤抽出、触媒分解、電気分解などの方法がある。大量に処理するには熱分解法が一般的だが、500℃以上の高温分解ではCF劣化が懸念される。
ポリプロピレンやナイロンなどの熱可塑性樹脂はほとんど分解されるが、航空機で使用されるエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂は、熱分解時に樹脂の一つが炭化し残留するので、CFを劣化させずに残留炭素だけ燃焼する焼成工程を設けており、岐阜大学では二段階熱処理法と呼んでいる(図1)。
学会誌・論文誌
一般社団法人廃棄物資源循環学会
N0.5炭素繊維強化プラスチック材料のリサイクル技術
平成25年9月 第24巻 第5号
特集 炭素繊維強化プラスチック材料のリサイクル技術
1)山口晃司(東レ(株)オートモーティブセンター(現在東レ(株)ACM技術部))
炭素繊維とCFRPについて
2)影山裕史(トヨタ自動車(株)材料技術開発部)
自動車のCFRPの現状と今後-CFRPリサイクルヘの期待-
3)柴田勝司(日立化成(株)筑波総合研究所リサイクル技術グループ)
常圧溶解法によるCFRPリサイクル技術
4)岡島いづみ・佐古 猛(静岡大学大学院工学研究科化学バイオエ学)
超臨界・亜臨界流体を用いるCFRPのリサイクル
5)板津秀人・神吉 肇・守富寛(カーボンフアイバーリサイクルエ業(株)・岐阜大学)
省エネ型熱分解法による長繊維リサイクル炭素繊維回収技術
6)水口 仁・塚田祐一郎・高橋宏雄(信州大学繊維学部・(株)ジンテク)
酸化物半導体の熱活性を利用したCFRPの完全分解とCFのリサイクル
7)和田匡史・田中 誠・河合和彦・北岡 諭・平 博仁・鈴木智幸
(フアインセラミックスセンター・大同大学工学部・科学技術交流財)
過熱水蒸気を利用したCFRPからの炭素繊維回収と繊維表面改質
炭素繊維の回収技術
炭素繊維リサイクル課題
1.リサイクル
・マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルの3種
2.炭素繊維の原材料に戻ることはない。
・原材料:AN(アクリロニトリル)、PANポリマー、ピッチ、不融化糸
3.連続長繊維にも戻らない。⇒連続繊維ボビン巻の形にはならない
・コンポジットでは繊維を切断し積層されているものがほとんど
・そのままリサイクルしても長繊維なので取扱い性に難
⇒切断短繊維でリサイクルすると扱いやすい、長くとも100mm程度か
4.マテリアルリサイクルではチョップ形状のCF回収が適当
・理由:リサイクル処理を容易にするためあらかじめ破砕
5.マテリアルリサイクルのコストアップ要因
・チョップドからミルド(1闘長以下)ではチョップからさらに加エコストかかる。
・更なるコストアップ要因
①繊維長を揃えるための分級
②ハイブリッドの場合、異種材の除去
③不織布付加価値化
6.リサイクルで繊維特性は劣化する
・繊維長⇒短くなるリサイクル毎に短くなる
・特性⇒強度は同等あるいは低くなる
・表面(界面)特性⇒変わる可能性高い
7.マテリアルリサイクルを行なってもリサイクル回数は限られる
・理由は繊維長が短くなると利用価値がなくなる
[PDF]炭素繊維リサイクル研究センター設立 CFRC - 中部経済産業局 より
http://www.chubu.meti.go.jp/d21kankyo/171002cfrp_matching/gifu-u.pdf
◆作業環境と健康影響
[PDF]炭素繊維リサイクル研究センター設立 CFRC - 中部経済産業局 より
http://www.chubu.meti.go.jp/d21kankyo/171002cfrp_matching/gifu-u.pdf
あとがき
腐植土層において、枯れ葉などをバクテリアが二酸化炭素や水に分解したあとに有機物質が残る。その有機物質が化学的、微生物学的変化を受けたものが腐植物質である。
腐植物質は、水に溶けるフルボ酸と、水に溶けないフミン酸に分けられる。
これらは有機酸と呼ばれ、鉄など多種の金属を結びつける機能があるとされている。
地表の70%を覆い、多数の動植物の生息の場である水圏(すいけん)は
微量元素分析研究を通して分析化学の社会的な重要性を示ししている。
私たちが働いてきたほとんどが、一貫した方法としてあらゆる「見えないもの」
「隠されたもの」に対して「何故だろう?」という素朴な疑問を突き付けることによって真実を「暴露」することだった。
とくに、安全に関するリスクアセスメントが良い例だろう。
今回の会員による個人研究発表と、未来に向けた炭素繊維の省エネリサイクル技術とリサイクルCFの規格標準化にむけてコンソーシアムを形成し、共同すべき時である。
リサイクル事業の将来性を期待した大変すばらしいご講演をいただき感謝します
(CRN 川崎 修)